台湾の街中でいま、日本でも見慣れている「日本企業の看板」を良く目にする。これは、それだけ日本企業が台湾に進出している証であるとも言える。日本企業にとって「台湾進出の魅力」とは何かを探ってみた。
「台湾進出を検討している日本企業は、中国に進出する前のテストマーケティングとして検討していることが多い。日本のやり方を理解してくれる台湾人を幹部候補生として雇い、企業が中国に進出した際に中国で管理をしてもらうケースもある」。台湾で企業のコンサルタントなどを行う太郎顧問有限公司の二村太郎代表はこう分析。人材派遣などのライフプロデュースを手掛けるパソナが10月17日に主催した「台湾進出企業セミナー」でその持論を展開した。
太郎顧問有限公司の二村太郎代表
JETROの世界貿易投資報告台湾編2014年版資料によると、2013年の日本の対台湾投資は、前年比1.4%減の4億868万ドルと2年連続で減少したものの、件数は618件と過去最高を記録した前年(619件)とは同水準となっている。業種別では、製造業の件数は前年の166件から174件に増え、金額も33.6%増の1億8742万ドルと、いずれも前年実績を上回った。非製造業は卸・小売業の件数が前年の290件から256件に減り、金額も1億4832万ドルと14.6%減少したが、ホテル・飲食業は件数で61件と前年比で15件増加し、金額も26.6%の2ケタ増になった。
二村代表も「今までに台湾進出している企業はサービス業、小売業、不動産業などが目立つ。特にサービス業は増え続けている。台湾人は親日なので日本の飲食に対して興味をもっているのだろう」と述べ、飲食業の台湾進出企業数の増加を裏付けた。さらに、「次に台湾でブームがくるのは日本の特産物を扱う企業ではないか」と推測している。
同じく同セミナーで講演したパソナ台湾の副社長兼営業マネージャー郭徳儀氏は現在、台湾に進出し、成功している企業の例として楽天やユニクロをあげ台湾進出の利点を提示した。郭氏によると両社は、日本本社の採用でグローバルに活躍できる台湾人を採用し、育成しているという。楽天では昨年、試しに台湾人のエンジニアを雇い大きなパフォーマンスを得たことを受け、今年は台湾人の採用枠を大きく広げて募集をした。ユニクロも語学にたけている台湾人スタッフを採用し、今ではアメリカのユニクロ店長として活躍している。
パソナ台湾の副社長兼営業マネージャー郭徳儀氏
台湾進出をした日本企業が台湾人に着目する理由として、日本人と価値観が似ている点、語学にたけている点、そして真面目という点であると口を揃える。これが起因となり、台湾をテストマーケティング地域と位置付けた日本企業の投資が増えている理由ではないかと見ている。
セミナーの様子
同セミナー参加者で既に台湾進出を果たしているニトリホールディンスの鈴木智晴さんは「台湾での店舗数も増え、売り上げも伸びてきているので台湾で受けいれられているとは感じるが、今後のさらなる拡大に伴い台湾に合わせた制度改革を行わなければならないという認識がある」と問題点を話していた。「台湾人スタッフとうまく関係を築く方法としては、コミュニケーションを密にとること、社員を平等に扱うこと、1人1人を尊重することです」(パソナ台湾の人事コンサルティング部門部長・清高珠美さん)。台湾進出時には台湾人の感覚をしっておくことも大事な要素だと言える。
日本企業が海外市場開拓に対して積極的になっている今、台湾進出はアジア進出を目指す日本の企業にとっての初めの1歩として、ベストなパートナーとなるだろう。
(台湾新聞)